+ 死の棘【島尾 敏雄】
桐野夏生「IN」は、この私小説「死の棘」の作者の浮気相手を探ってゆく物語だった。その繋がりで読んでみたのだけど。
長年に渡り浮気していた夫と、それを知った妻と、二人の子供。その傷が修復されるまでの夫婦の戦いと絆を描いたもの。
お互い傷つけあい、醜さ全開で泥仕合。子供はそんな父親を指して「ホラうちのお父さんキチガイでしょ」と友達に自慢したり、現代ではまぁ見られないほどのガチのぶつかり合い。
夫のズルさも甘えもリアル、妻の諄さも愚鈍さもリアルで、読んでてもう腹が立ってくる程で。
妻は時々ヒステリーの発作に見舞われ、夫を滅茶苦茶に責める。外出時の浮気を心配し、仕事先へさえもついてゆく。妻のヒステリーで夫はキチガイのようになり、箪笥に頭を打ち付けたり、電車に飛び込もうとしたり。
今までの女性関係を妻に追求され、警察に尋問されているような錯覚に陥り「手錠をしないでください!」と叫び出すくだり、そもそもがこの人達はちょっとアレな人達なんじゃないか、実はこういうプレイなんじゃないかと感じたり。
そして「あれ?」と思う。
なんだかんだ言って、この夫婦、別れないよなと。
昔の話だから、嫁の方が逃げるのは難しいのだろう。でもこれだけ追い詰められたら、夫、逃げるよな普通・・・・・・と。
あーーそれが愛だって話なのかなぁ?でもそれを愛というなら、最初に何年も奥さんに冷や飯喰らわせ花嫁道具を売らせて浮気してた無神経さが余計気持ち悪いわ。それもこれも時代背景が違うからなのかなぁ・・・・・・
と思いつつ、結局3/4しか読めませんでした。こんな気持ちで読むのも失礼かもと。
2011年の感想。
・・・・・・↑結局最後まで読んでしまいました。
んーーなんだかなぁ。やっぱりよく分からないまま。延々と夫婦喧嘩とノイローゼとヒステリーの発作の繰り返しが続く。思い出しては嫉妬してヒステリー、想像に嫉妬してヒステリー、ヒステリーを起こされて神経衰弱、自殺騒動、予定調和な喧嘩プレイ。何時間かおきの、うふふあはは。
1.ある程度のお金があって
2.ある程度のヒマがあって
3.子供より色恋優先 という人の道楽にしか思えなくて、真面目に読むのがバカらしくなって。
自分が道ならぬ恋をしたり、そんな相手を本気で好きになったら、この本の一行一行に共感出来るのだろうか。
この小説って誰がどのように読むのだろう。裏切られてもキチガイになっても飽くまで夫の世界で「それでも夫好き好き」とあがき続ける嫁ミホの姿に、何らかのピュアだとか菩薩だとかそんなものを見るべきなんだろうか。
変形して変質して毒物になってるような愛から元の愛の大きさを脳内復元して、マニアックな角度から見た恋愛小説と受け止めるべきなんだろうか。
短絡的な人間なので、分からない。