+ 逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録【市橋達也】 | around the secret

+ 逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録【市橋達也】

 不謹慎ながら冒険小説として読めてしまった。

 日頃から記憶している防犯カメラの場所を避けつつ逃亡する。
 図書館で図鑑を見て毒のある魚を覚え、魚を釣って食料にする。
 離島まで泳いで渡り、サバイバル。


 裁縫道具を取り出した。針に糸を通した。鏡を見ながら、鼻に鍵を向けた。
 鼻筋の横から糸のついた針を突き刺した。反対側から糸を抜いて、糸をギュッと締めた状態にして、また反対方向へ針を刺した。それを何度も繰り返した。ちょうどラーメンのチャシューの肉のかたまりをたこ糸でぐるぐる巻きに縛るようにして、鼻を細くしようと思った(P19)。


 素頭が良くて運動神経にも恵まれている子なのだろう。絵も上手いし我慢も努力も出来る。そして少しネジが緩んでいる。それがよく分かった。


 そして人間には優れた資質があれば善悪なんて関係ないのかも知れないと皮肉な気持ちになった。


 この子は犯罪でさえも自分の経験にして糧にして個性にしてしまうのだろうか?


 ある種の、過去が汚いアーティストやクリエイターのように。