+ オスカー・ワオの短く凄まじい人生【ディアス ジュノ】
- デジャーソリスなんて名前、人生でもう聞く事はないと思ってたよ。
- 主人公を取り巻くオタク事情には、AKIRA ハーロック 攻殻機動隊 etcetc・・・・・・スターウォーズやトールキン以上に日本のアニメが数多く出てくる。これぞ日本文化万歳。
舞台はトルヒーヨ独裁体制下のドミニカ。- 若い美人は発見次第権力者に献上、権力者に目をつけられたら無理矢理な濡れ衣を着せられ私刑。何だか昔のSFや少年漫画のような独裁者による無法地帯だ。
- そんな穏やかならぬ舞台で「オスカー家サーガ」とも言えそうなこの話は主人公オスカーを軸にオスカーの祖母、姉、母と巡り、時代も50年くらいは前後する。
大筋では三次元の女性と何とかして付き合いたい!脱童貞したいという思春期のオタク少年オスカーが、足掻いて足掻いてどんどん追い詰められていく話だが、そのオスカーを支える姉、姉と親子の葛藤を繰り広げる母、時代を遡って若かりし頃の母、祖母など、出て来る人間が生き生きと生々しくて熱量やドッシリとした重みさえ伝わってくる程。作者なんて男なのに、どうしてこんなに母娘間独特のの支配関係(それだけじゃないけどね)を分かってらっしゃるか。
私にとって日本はホームだし、所謂英米ものももう慣れ親しんだ庭みたいなもん。だがドミニカともなると感情表現や感覚、感性もかなりアウェイで読んでいるだけで新鮮なのも手伝って。
- オスカーにも何度か彼女が出来かけもするのだけど、読んでいる側にすればそれが愛なのか、自分の衝動の対象として妥当で現実的だと思っただけなのかよく分からず、衝動と焦りと絶望感だけが伝わって来る。
- 発情期の動物のように、いっそピュアとも言える気持ちで異性を求め、異性に認められたいと足掻く。まるでそれが自分の全存在価値であるかのように。
- 文化だとかカッコだとか人生設計だとか。そういうものを取っ払った南国の生々しさのようなもの。
私には「愛のために死んだ」のではなく「発情のために死んだ」ようにしか見えないのだが。そこに男女の性差を感じる。
ネタバレあり
(最終、最後の手紙より )
それでどうなったと思う?イボンとやつと本当にセックスしたのさ。神は偉大なり!オスカーは気に入ったと書いていた。(略)オスカーが本当に感動したのは(略)それまでの人生で彼が予想もしなかった、ちょっとした親密さだった。(略)イボンから少女時代の話を聞いたり、自分がこれまでずっと童貞だったことを話したりするという親密さ。こんなにも長い間これを待たなきゃならなかったなんて信じられないとオスカーは書いていた(待っていたなんて言い方はしないほうがいいと言ったのはイボンだった。じゃあなんて言えばいい?彼女は言った。そうね、ちゃんと生きてきた、かしら)。オスカーは書いていた。他のやつらがいつも話していたのはこれだったんだね!まったく!僕も前から知っていたらなあ!素晴らしい!素晴らしい!
- イボンの表現「ちゃんと生きてきた」が素晴らしい。
Jock(イケメンリア充)は逆立ちしてもこの境地に立てないだろう。オタク万歳。
そうそうwikiでスクールカーストを調べていたら、面白いリンクがあった。
オタクが人気者になれない理由
最近はこういった事が「発達障害」や脳の欠陥とされる風潮があるが、私には「皆が迷う時に迷わない、"自分が欲しいものが予め分かっている"ギフテッド」にしか思えない。
そういった意味で、上記リンクには共感する。